FX外国為替取引投資の基礎知識と始め方!

FXはどんな金融商品か

 
短期間に莫大な利益を手にする素人
2007年の夏、東京在住の主婦がFXで3年間におよそ4億円を稼ぎ、約1億3,900万円の所得税を脱税したとして有罪判決を受けました。最近、全国各地でこのようなケースが相次いでいます。

新聞報道によれば、2006年だけでFXの利益の脱税額は、277億円にもなるそうです。所得を正しく申告しなければ罰せられるのはいうまでもありませんが、ここで気になるのは、外国人投資家や金融
機関のディーラーのように何百億円、何千億円もの資金を運用したことのない、いってみれば一般の素人の彼らが、どのようにして外為市場で短期間に大きな利益を得たのかということです。実は、ここにこそFXならではの効果的な投資手法があります。

少ない元手で大きな効果を得るレバレッジ
外国為替証拠金取引であるFXは、文字通り証拠金を担保としてFX会社に差し出して、自分の欲しい通貨を買い付けるという取引です。買い付けられる金額は、業者によって違いはあるものの、何と差し入れた証拠金の数倍から数百倍程度まで自由に設定可能。つまり、投資家は自己資金の何倍、あるいは何百倍もの資金を動かしていることになるのです。

これをレバレッジ効果といいます。直訳すると「テコの力」。小さな力で大きな効果を発揮することを意味していて、少ない元手で大きなリターンが可能ということです。ちなみに、レバレッジ効果を発揮することを「レバレッジが効いている」といいます。


 
レバレッジの効かない外貨預金
FXは、円を売って外貨を買うという点では、円を外貨に替えて預金する外貨預金と同じです。円
キャリー取引と呼ばれる投資に分類されます。しかし、FXと外貨預金には、決定的に異なることがあります。

それが先述したレバレッジが効くか、効かないかです。外貨預金はレバレッジが効かず、投資家が預け入れた日本円の範囲内で外貨を購入し、その外貨を外貨預金口座に預けます。例えば、計算を簡単にするために手数料は考えないとして、1ドル100円の為替レートでは、100万円で1万ドルの外貨預金をすることができます。

FX投資はハイリスク・ハイリターン
レバレッジの効くFXでは、FX会社に証拠金を差し入れると、驚くほどたくさんのドルが手に入ります。先ほどの例でいうと、証拠金100万円で10倍のレバレッジを効かせれば10万ドル、50倍効かせれば50万ドルが買えるのです。レバレッジの倍率は、取引業者によって幅が異なり、設定された範囲内で投資家が自由に選択可能。ちなみに、外貨預金と違い、FXでは円を買うこともできます。

レバレッジは利益を大きくするものの、同時に損失も大きくすることを忘れてはいけません。レバレッジを効かせれば効かせるほど、投資家の為替リスクは高くなっていくのです。損失額を限定するためのロスカット基準などありますが、場合によっては、投資した自己資金以上の損失が出て、追加の資金を必要とするケースも。一方、外貨預金は損失したとしても投資した資金の為替変動幅内でしか損失が出ません。


 
為替差益とは何か?
FX投資では、次の2つの方法で利益をあげます
①通貨を売り買いして為替レートの変動によって差益を得る方法
②2通貨間に生じる金利差で利益を得る方法(スワップポイント)

ここからは①の為替レートの変動によって差益を得る方法を解説しましょう。
例えば、あなたが日本円を100万円もっていたとします。 ドルが高くなって1ドルが100円から110円になっても、円を保有しているあなたにとって100万円は100万円です。何ら利益をもたらすことはありません。

でも、1ドル=100円のときに、手持ちの100万円を1万ドルに替えておけば話は違います。1ドルが110円になれば確実に円資金は増えます。つまり、1ドル110円でもう一度円に交換すると110万円になり、10万円の利益が出ます。このように、ある通貨Aからほかの通貨Bに交換し、再度、通貨Bを通貨Aに戻したときに得られる利益のことを為替差益といいます。交換した通貨Bがもともと保有していたA通貨に対して高くなれば、言い換えれば、自国通貨が安くなれば為替差益が出ます。自国通貨に対して将来高くなりそうな要因をもつ通貨に投資して、為替差益を狙うのがFXの目的です。

「円安ドル高になり、輸出企業の経常利益が何百億円増加」という新聞記事を目にすることがあると思います。この場合の利益は、期初に想定していた為替レートより円安ドル高になり、対米向けの
売上高が増え、経常利益が増加したことを意味します。


 
為替差損とは何か?
前項で為替変動が利益になる場合を取り上げましたが、ここでは損失になる場合を説明しましょう。

1ドル=100円のとき、手もちの100万円を使って1万ドルに交換したとします。ところが、ドルが安くなって(円高になって)1ドル=90円になってしまったとします。ここでドルを円に交換すると1万ドル×90=90万円にしかなりません。結果として、10万円の損になります。
つまり、為替差益とは逆で、ある通貨Aからほかの通貨Bに交換し、再度、通貨Bを通貨Aに戻したときに被る損失のことを為替差損といいます。自国通貨である円をほかの通貨に交換した後、円がほかの通貨に対して高くなれば(「円高」になれば)為替差損が出ます。

為替リスクとは何か?
為替レートは常に変動します。サブプライム問題のように、日本以外の国で起こった問題が外国為替市場に影響を及ぼすことは多々あります。こういった外国為替市場に影響を及ぼす種々の要因を為
替リスクと呼びます。

為替リスクには、政治的なものや経済的なもの、国内の問題から国外の問題まで幅広く存在します。時には、バイオ燃料とか電気自動車の技術開発とかといった新技術開発も、産油国の経済に与える影響が大きいと為替を動かす要因になります。

為替リスクのある金融商品に投資する場合、リスクに対処できるノウハウを養う、つまり新聞報道やWebで入手できる情報に常に目を光らせていることが大切なのです。


 
スワップポイントは2つの通貨の金利差
FXでの利益をあげる方法には、為替レートの変動によって差益を得る方法とスワップポイントによる方法があります。ここからはスワップポイントについて解説を進めていきます。

一般的に、それぞれの通貨には、それを発行した国の中央銀行が金利を決めています。金利の異なる2種類の通貨を売買するとき、2通貸間に生じる金利差調整分がスワップポイントです。金利の低い通貨を売って、金利の高い通貨を買った場合には、その金利差額分のスワップポイントを受け取ることができ、反対に金利の高い通貨を売って金利の低い通貨を買う場合には、その金利差額分のス
ワップポイントを支払うことになります。当然、投資家の目は金利の高い通貨に注がれることは、いうまでもありません。

長期的なスタンスで低いリスクの投資
スワップポイントは取引成立から1日以上経過すると発生し、利息は毎日得られます。もちろん、金利が高くなれば、スワップポイントも大きくなります。

FXではレバレッジを効かせることができるので、スワップポイントの収益は少なくありません。それに投資先が国の通貨なので、株式投資のようにゼロになる危険性はないといえます。ただ、10倍以上のレバレッジを効かせると為替変動によるダメージも大きくなるので、2~3倍のレバレッジにして長期的なスタンスで投資したいところです。ちなみに、スワップポイント狙いとしては、オーストラリアドルやニュージーランドドルに人気があります。


 
中央銀行が決めている銀行間取引でのレート
中央銀行が決めている金利、政策金利とは何でしょう。政策金利は、それぞれの国の基本的な金利であり、金利体系のもとになる短期金利です。この短期金利は、インターバンク市場と呼ばれる金融機関同士がお金の貸し借りをする市場で適用される金利です。インターバンク市場でこの政策金利から大きく逸脱するような金利が取引されれば、中央銀行はすかさず公開市場操作(オペレーション、または単にオペと呼ぶ)を行い、政策金利近辺に落ち着かせます。

各国によって政策金利の呼び名は違います。例えば、日本ではコールレート、アメリカでは中央銀行であるFRB(=FederalReserve Board、連邦準備制度理事会)が決めるフェデラル・ファンド・レート(FFレート、FF金利)のことをいいます。以前は、日本銀行が市中の金融機関に直接貸し出す際に使われる公定歩合を政策金利としていましたが、市場重視の立場からコールレートに変更されました。なお、海外においても、政策金利についての権限は日本と同じようにそれぞれの中央銀行がもっています。

消費税の引き上げのようにわれわれの生活に直接影響するものと違って、政策金利が引き上げられても直接的に国民の生活に影響を及ぼすことが少なく、あまり関心がないのが事実でしょう。しかし、
実際は政策金利が上がれば、金融機関に預ける金利が上がるし、金融機関から借りる住宅ローン金利が上がります。つまり、生活に大きな影響を与える、大もとの金利といえるわけです。


 
FX投資の損益をシミュレーション
外貨の金利と国内の円金利を比較すると、現在の円金利は非常に低いため、大きな金利差が生まれます。これは投資家にとって、大きな魅力です。

FXを具体的にシミュレーションしてみましょう。差し入れる証拠金は105万円。これに10倍のレバレッジを効かせれば、円換算にして1,050万円までドルを購入できます。円相場を1ドル=105円とすると、10万ドルまで買い付けられました。 ドルと円の金利差(スワップポイント)が4.5%あれば、ドルを買っている状態、つまりポジションを保有していると毎日この金利差の利息相当分が受け取れるのです。

1ヵ月後に1ドル=106円で売り戻すと、1ドル当たり1円の利益となり、10万ドルでは10万円が手に入ることになります。加えて、1ヵ月間の10万ドルに対する4.5%の利息相当分370ドル(106円/ドルで円換算すると3万9,220円)も利益です。つまり、合計で13万9,220円の儲けとなります。

逆に為替が1ドル=104円になったら、為替売買で-10万円となりますが、スワップポイントは370ドル(104円/ドルで円換算すると3万8,480円)のままなので、実質の損金は-6万1,520円です。このことは高金利の外貨に投資すれば、円金利との金利差によってより大きなスワップポイントが発生し、為替売買での損失をカバーしてくれることを意味します。

このようなメリットから、最近では個人投資家の為替に対する意識が変化して、海外通貨への関心が高まっています。


 
満期を待たなければならない外貨預金
外貨預金は、一部の外資系金融機関を除いて、多くは定期預金型になっているケースが多いようです。したがって、預け入れた時点より為替レートが円安になった場合、預金者は得をしているにもか
かわらず、満期が来なければ円に戻すことができません。結局は、満期の時点での為替レートにまかせるしかないのです。

また、途中で解約したら、思いがけない手数料がかかったり解約ペナルティを科せられたりして、為替レートの利益など吹き飛んでしまうこともあります。このようなトラブルを避けるためにも、あらかじめ中途解約で支払わなければならない手数料やペナルティについては、事前に確認しておくことが必要です。

FXの「差金決済」とは?
FXでは、差金決済という独特の方法で処理されます。簡単にいえば、売りと買いのレートの差額だけを決済することです。決済する時期は、まったく制約を受けません。たとえ利益が少なくても、投資家の希望があれば、いつでも即座に反対売買で差金決済することができるのです。

当たり前のことですが、為替相場は投資家の思惑通りに動くとは限りません。損失によって、最初にFX会社に差し入れた証拠金が一定水準を下回ると、担保価値がないと判断されて証拠金の追加
(追加証拠金=追証)を求められます。もし、追証を差し入れないと、ロスカットルールによってFX会社が自動的に差金決済し、損失が確定して取引が終わります。


 
取り扱う通貨の少ない外貨預金
世界には、実にさまざまな種類の通貨があります。しかし、好きな国の通貨を運用できるとは限りません。どうしても、仲介役の業者が取り扱っている通貨から選択することになります。

外貨預金の場合、国内の金融機関では、米ドルやユーロ、英ポンドといった主要通貨に限られている場合が多いといえます。また、外資系の金融機関でも、取り扱う通貨の種類は多くありません。マイナーな通貨を金融商品として提供すると、金融機関の負担するコストが高くついて収益を脅かしかねないからです。とはいえ、投資家の立場からすれば、選択の幅が広がることは歓迎で、より多くの通貨を取りそろえてほしいところでしょう。

投資家のニーズに応える豊富な品ぞろえ
投資家の要望を満足させる品ぞろえという点では、外貨預金よりFX投資のほうが優れているといえそうです。何しろ、FXが提供する通貨は、米ドルやユーロ、英ポンドの主要通貨はもちろんのこと、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、南アフリカ共和国のランド、カナダドル、香港ドル、スイスフランなど、かなり豊富です。

その理由は、外貨預金を提供する金融機関と違い、FX会社は単に顧客の注文を取り次ぐ業務で、すべてのリスクはFX会社ではなく投資家が負うからです。一般的に、マイナーな通貨は短期金利が非常に高くて魅力的ですが、過去には日本円や米ドルに対して交換比率が大きく変化したことがあります。いわゆる、平価切り下げです。したがって、マイナーな通貨に投資するときは、主要通貨より為替リスクが高いことを忘れないでください。


 
外貨預金と外貨建てMMF
為替リスクのある外貨金融商品に投資する目的は、ずばり金利差を稼ぐことです。では、いったいどんな金融商品が対象になるのでしょうか?

最も一般的なのは、短期金融商品で金利を稼ぐ方法です。身近なものが、外貨預金と外貨建てMMFでしょう。夕t貨預金は、預ける通貨が円ではなく、外貨というだけです。主要な通貨であれば、日本の銀行の窓口でも取り扱っていて、3ヵ月から1年物の定期預金になっていることが多いようです。元本保証もあります。

外貨建てMMFは、海外の金融市場で運用される投資信託です。国内の証券会社で取り扱っていて、利回りはどこの証券会社もほとんど同じ。いつでも解約できる点は、外貨預金と異なります。元本
保証はありません。

FXをコスト面、税金面で他商品と比較すると
外貨預金や外貨建てMMFに比べると、ハイリスク・ハイリターンの印象が強いFXですが、満期もなく、投資先も自分で決められる自由度は大きな魅力です。レバレッジの効かせ方によっては、ある程度のリスクも自分でコントロールできます。極端には、1倍に設定できるFX会社もあり、実質では外貨預金と変わりません。むしろ、FXのほうが手数料のコストが抑えられて得なのです。

税金の扱いについては、為替差益とスワップポイントは税法上の金利にならないので、利子に適用される20%の源泉徴収はなく、雑所得として総合課税されます。基本的には、年度末の確定申告が
必要です。